放射能では頭は良くなりません(多分・・・)

先日、郡山市のタウン誌の紙面に掲載されていた記事についてのブログを書いたところ、このブログを読んでくださったという方からメールをいただきました。
差出人のお名前には、早稲田大学教育総合科学学術院 複合文化学科の浜邦彦(氏)とあります。
ネットでプロフィールを拝見したところ、現在は早稲田大学教育総合科学学術院の複合文化学科で准教授をなさっている方のようです。
タウン誌に掲載されていた記事(手紙)の内容にある「被曝者は長命」などという内容に驚き、その根拠を検索・調査をしてくださったというメールをいただき、お礼を申し上げるとともに、いただいたメールの内容を転載することを快く承諾してくださったので、ここにそのまま転載させていただきたいと思います。

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浜邦彦氏からのメール全文
【はじめまして。
5月6日のブログの記事を拝見しました。
私は郡山の『ザ・ウィークリー』誌の件、今日になって知ったのですが、
すっかり驚いてしまって、いくつか検索してみた結果、理由がわかった気がしました。
以下、あるメーリングリストに投稿した内容です。
ご参考になれば幸いです。
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浜です。
またしても、とんでもないものが出てきました。既出だったらごめんなさい。
郡山で出されているタウン紙、「ザ・ウィークリー」への寄稿です。
http://www.the-weekly.jp/images/pdf/110507.pdf
問題の投稿は、7ページ目の下のほうにあります。
福島への手紙「長崎から」
いま、長崎では被爆者が「俺たちは原爆投下直後にどんな野菜でも、魚でも、平気で食べた。おかげさまで、身体は元気で、頭もよくなった。世間では何を騒いでいるのか!」と話しています。
私は爆心地から3.4kmで被爆し、爆風で家が半壊しましたが、母親はいま95歳で元気です。親父は92歳で亡くなりましたが、こけて頭を打ったからです。
私は人格以外何も悪くない、と家内が申します。被爆者(特に男の被爆者)は長命であるというデータもあります。
被爆医療の専門家である長崎大学の山下教授は、放射性元素で有害であると証明されているのは放射性ヨウ素だけと言明しています。しかも半減期は8日です。
私は卒業研究のとき、レントゲンなどとは桁違いに強いX線などを平気で浴びていました。ビームを探すために、手に持った蛍光板をあちこちに移動していました。現在のX線装置は、あまりに厳重で、機械の値段を高くするのが目的と思われます。
福島のみなさん、どうか元気を出してください。(九州工業大学学長 宮里達郎)

生き残って長寿をまっとうしそうな被爆者どうしの与太話なら、まあ笑って聞き流してあげるべきかもしれません。
そういえば泉重千代さんも愛煙家だったよなあ、とか、そういうレベルの話かもしれない。しかしこの九州工大元学長――正しくは「元」学長です――が次のように言うのには目を疑いました。
被爆者(特に男の被爆者)は長命であるというデータもあります」びっくり仰天して検索してみると、元になっているのは中国新聞の1月の記事のようです。(中国新聞のサイトが見れないので、以下は別のブログからの転載です)

中国新聞
手帳早期取得の男性ほど長命
'11/1/12
被爆者健康手帳を早い時期に取得したほど、被爆者の男性では長生きする傾向にあることが、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の大谷敬子研究員たちの共同研究で分かった。原医研が12日に広島市南区の広島大広仁会館で開くシンポジウムで報告する。
調査対象は、1960年から69年末までに被爆者健康手帳を取得し、70年1月1日時点で生存していた15万9843人。原医研が管理する原爆被爆者データベースから抽出した。旧原爆医療法に基づき被爆者健康手帳を取得した被爆者は、65年までは無料健康診断を年2回、65年からは年4回まで受けられるようになった。
大谷研究員たちは、被爆時年齢、被曝(ひばく)線量や性別などを考慮して統計学的に解析し、最大で10年となる手帳の所持期間の差が死亡リスクに影響しているかどうかを調べた。
その結果、男性では早い時期に手帳を取得した被爆者ほど死亡リスクが低くなる傾向を確認した。特に30歳未満で手帳を持った被爆者では、60年に取得していた人の97年末時点の生存率が、69年になってから取得した人より4%高かった。
共同研究者の大滝慈教授は「健診が被爆者の健康維持に役立つことが数値で表れた。援護策拡充を検討する際の参考になる」と意義を語る。一方で女性の被爆者では差がはっきり出なかった。大谷研究員は「研究は着手段階。死因ごとの解析も必要だ」としている。
シンポ「広島の黒い雨と関連する課題」は午前9時〜午後5時。広島やカザフスタンなどの研究者16人が発表する。多くは英語。無料。

呆れてものも言えません。この記事をどう読めば被爆者男性は長命だなんていうことになるのでしょう?
記事のタイトル通り、調査した被爆者のうち、手帳を早く取得した男性のほうが長命の傾向がある、というにすぎないでしょう。
そもそも被爆者しか調査していないのに、「被曝者は長命」などと言い出すのは、工科大学の学長どころか、中学校からやり直したほうがいい。
すでにツイッター等で広まっているようです。まったくやりきれません。
早尾さん、郡山での矢ケ崎先生の講演実現、すばらしいことです。
早尾さんの努力に、心から敬意を表します。
浜 邦彦 早稲田大学教育・総合科学学術院 複合文化学科】
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上記の「矢ケ崎先生の講演実現」というのは、本日17日に郡山カルチャーパーク内カルチャーセンターで開催された『内部被曝を避けるために〜怒りを胸に、楽天性を保って、最大防御を 講師 矢ヶ崎克馬氏(琉球大学名誉教授)』という講演会のこと。
残念ながら仕事で聴講することは出来なかった私ですが、後で講演内容を検索してみようと思います。

何の影響力も持たない私のような個人でも、ブログという媒体を通じて、福島県で実際に起きている出来事をこうして知っていただき、少しでも多くの方に広げていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです。